学生の頃、「金を失う道と書いて鉄道」という冗談を言っている鉄道好きの友人がいた。鉄道界隈では昔から言われている定番ジョークらしいが、ただ漠然と鉄道が好きという気持ちを持っている程度の鉄道好きだった私は聞いたことがなかったので、
金 失 道 → 鉄道
「なるほど」と納得してしまった。頭の上に電球が出現した。
「金を失う道」というのは多かれ少なかれ間違いないと思う。でも、趣味には金がかかるものだ。スポーツだってカメラだってゲームだって食べ歩きだって旅行だって金はかかる。なので生活に支障をきたさず、家族や他人に迷惑をかけない程度範囲では大いに金を使い、楽しんでよいと思う。
ただ、その金の使い方や楽しみ方は鉄道好きの中でも様々だ。私が把握しているだけでも10種類以上いるのではないだろうか。
所謂、「〇鉄」というやつ。
有名どころは 撮り鉄 、乗り鉄あたり。
ここでは、どんな種類の鉄道好きがいるの?ということを調べ、ちょっと意見を述べる。全く持って誰得な記事を書いていこうと思う。
鉄 っちゃんと鉄子
まず○鉄の前に、男女で鉄道好きの呼び方が異なる。
男性の場合→鉄っちゃん(てっちゃん)
女性の場合→鉄子(てつこ)
いつ頃から言われているのかは不明だが、比較的「鉄っちゃん」は一般にも通用する言葉なのではないだろうか。ちなみに、鉄子はそうそういない。希少種である。やはり「乗り物好きは男の趣味」という印象が強いのだろうか。男女比は工業高校以上に悲惨な数値だと勝手に思っている。
ただ、女性でも「自分は鉄っちゃん」という認識の人もいるので、「鉄っちゃん」自体は広い意味で男女を問わず鉄道好きを指す言葉なのかもしれない。
あと、単に「鉄(てつ)」と呼んだりする。
「お前もしかして鉄?」
「え?お前も?」
「そうなんだ!何鉄?」
(キャッキャ)
・・・みたいな会話が時々ある。
鉄の種類
- 撮り鉄・・・列車の写真を撮影することを楽しむ鉄
- 乗り鉄・・・鉄道車両に乗ることを楽しむ鉄
- 降り鉄・・・途中下車して駅周辺を観察したり、そのまま観光することを楽しむ鉄
- 模型鉄・・・模型を集めたり改造したり作ったりすることに楽しむ鉄
- 音鉄・・・汽笛、モータ音、ジョイント音(ガタンゴトンってやつ)を聞いたり録音したりすることを楽しむ鉄
- 車両鉄・・・鉄道車両の構造や種類、動力などを対象に研究することを楽しむ鉄
- 収集鉄・・・切符や車両の部品、グッズを集めることを楽しむ鉄
- 時刻表鉄・・・時刻表を眺めたり自分で引いたり、ダイヤを楽しむ鉄
- 歴史鉄・・・鉄道の歴史を研究対象に楽しむ鉄
- チビ鉄・・・鉄道好きなちびっ子(ちょっとこれだけ概念が違うか)
- 地理鉄・・・鉄道が 施設されている土地 の自然や科学を研究対象に楽しむ鉄
- 地形鉄・・・地理鉄と似ているが、鉄道が施設されている土地の地形を研究対象に楽しむ鉄
ざっとこんなものだろうか。と思って、他にはあるのかな?と思って調べてみるとトンデモナイ数の「〇鉄」がヒットした。以下、私が知らなかった○鉄。
- 受信鉄・・・ 鉄道無線を傍受することに楽しみむ鉄
- 押し鉄 ・・・ 駅スタンプを押して巡ることに楽しむ鉄
- 駅鉄 ・・・ 駅の構造や駅名の由来探しを楽しむ鉄
- 配線鉄 ・・・ 駅構内や線路の配線を研究対象に楽しむ鉄
- 廃線鉄 ・・・ 廃線を訪れてその線路上を散策したり調べたりすることを楽しむ鉄
- 線路鉄 ・・・ 分岐器(ポイント)や線路の構造を楽しむ鉄
- 設備鉄 ・・・ 橋梁やトンネルなど、線路周りの設備を撮影したり研究したりすることに楽しむ鉄
- 運転鉄 ・・・ シミュレーターや体験運転を楽しむ鉄
- 保安鉄 ・・・ 鉄道を安全に運用するための設備(信号など)を研究対象に楽しむ鉄
- 歴史鉄 ・・・ 鉄道の歴史を研究対象に楽しむ鉄
- 描き鉄 ・・・ 鉄道車両や線路、設備など鉄道に関する絵を描くことを楽しむ鉄
- 架空鉄 ・・・ 架空の鉄道路線を想像したり、時刻表・路線図などを作ったりして楽しむ鉄
- 駅弁鉄 ・・・ 駅弁を楽しむ鉄
- パパ鉄・・・鉄道好きなパパ。息子はチビ鉄になる可能性が高い
- ママ鉄 ・・・ チビ鉄やパパ鉄の影響で鉄道が好きになったママ
- 会社鉄 ・・・ 鉄道会社について調べたり株を購入したりすることを楽しむ鉄
- 法規鉄 ・・・ 鉄道に関する法律を学ぶことを楽しむ鉄
- 葬式鉄 ・・・ 廃止前のラストランで悲しく見送ることを楽しむ鉄
- 軍事鉄 ・・・ 装甲列車や列車砲など、「兵器としての鉄道」を楽しむ鉄
- 哲学鉄 ・・・ 車体の製造年月を見てその時代に思いを馳せることに楽しむ鉄
- 鉄警鉄 ・・・ 鉄道警備隊を楽しむ鉄
- SL鉄 ・・・ とくにSLが好きな鉄
- ゲーム鉄 ・・・ 鉄道関係のゲームを楽しむ鉄
- 寝鉄 ・・・ 寝台列車に乗ることを楽しむ鉄
- 盗り鉄 ・・・ ヘッドマークや車番プレートなど、鉄道に関係する部品などを「盗る」ことに楽しむ鉄。終身刑に値する。
- クズ鉄 ・・・ マナーを守らず周りの人に迷惑をかけることに楽む鉄。死罪に値する。
自分が知らなかったものを含めて38種類あった。これだけ羅列して、だんだん「鉄」という漢字がゲシュタルト崩壊してきた。
確かに一つ一つ見ていくと、楽しみが理解できなくもないものが多い。ただ、よくもまぁ名前をつけたもんだ。
ちなみに私は模型鉄・車両鉄・線路鉄あたりが強い。あと少しだけ降り鉄や架空鉄も含有しております。
分類を見て思うこと
趣向の多様性は素晴らしい。上記の分類で「自分はこれだけ!」という鉄は居ないと思う。
とある車両が好きなら、その車両の歴史にだって興味が湧いてくるし、その車両が古いものなら昔走っていた路線を訪れてもみたくなる。そんな感じで、鉄道の好きなところは人それぞれだし、ジャンルが完全に一致する人はなかなかいないだろう。
知識量も技術力もバラバラだ。なのでお互い「そんなことも知らないの?」とか「○○も持っていない奴は△△好きと言うな」とか、(鉄道に限った話ではないが)好きなものでマウントの取り合いをするようなことはしてほしくない。
好きなものの大枠は一緒なのだから、自分が好きなものを知らない人がいたら、「これはね、ここが面白いところでね・・・」と自分が知っている魅力を紹介して、楽しみ方を共有できる優しい世界であってほしい。
撮り鉄について
撮り鉄に関しては、世間一般のイメージがあまり良くないことが悲しい。
私有地の畑に無断で入っておいて、撮りたい車両が通過する際に視界に入った地元の方に罵声を浴びせたり、桜の木の枝を勝手に切ったりと、マナーのなっていないクズ鉄も確かに存在する。そのような輩を擁護するつもりもない。ただ、そのような存在はごく一部であり、撮り鉄界隈でも淘汰すべき対象となっていることも理解してほしい。とある鉄向けの雑誌には「嫌われない撮り鉄になるために」というタイトルのコラムが掲載されることもある。それだけ撮り鉄界隈でも、クズ鉄の迷惑行為の存在は問題視されている。
でも撮り鉄がいなくなれば、撮り鉄ではない鉄も困る。もちろん仕事で鉄道の写真を撮る人もいるっちゃいる。JRや私鉄各社専属のカメラマンもいるだろう。でも、我々の趣向の対象は必ずしもビジネスで写真を撮る人の撮影する”金になる鉄道写真”だけではない。側線に数十年放置された、今にも朽ちて無くなりそうな貨車や、廃線になって誰も訪れることの無くなった秘境駅跡など、趣味でしか行かない、行きえないような場所にわざわざ労力と金をかけて訪れて、魅力を情報発信してくれるもの撮り鉄なのだ。wikiにも詳しい情報がないような超絶マイナー車両の構造や歴史について調べてWEBに載せてくれているのも撮り鉄だ。なので私は撮り鉄に感謝しているし、これ以上世間に嫌われて欲しくもない。今や撮影スポット近隣住民や、鉄道会社からの風当たりもより一層強くなっているが、鉄道界隈全体で自浄作用が働きつつあることも理解してほしい。