電流制限抵抗値早見表
表示用の小型LEDを使用する際に、毎度計算する手間を省くための早見表を作りました。抵抗値は入手しやすいE24系列から選定しています。
電源電圧 | 暗い | 普通 | 明るい | 明るい(MAX) |
---|---|---|---|---|
3.3V | 7.5k~1.8k | 1.5k~360 | 270~150 | ~75 |
5V | 15k~4.7k | 3.3k~820 | 560~270 | ~180 |
7V | 2.7k~6.2k | 5.1k~1.3k | 1k~510 | ~300 |
9V | 3.6k~8.2k | 7.5k~1.8k | 1.5k~750 | ~390 |
12V | 5.1k~11k | 11k~2.7k | 2k~1k | ~560 |
15V | 6.8k~15k | 15k~3.3k | 2.7k~1.3k | ~750 |
24V | 120k~27k | 24k~5.6k | 4.7k~2.2k | ~1.3k |
各指標の定義は以下の通りです。
暗い | 点灯していることが最低限確認できれば良いレベル。 消費電力を最小限に抑えたいときなど。流れる電流は概ね0.1~0.9mAで算出。 |
普通 | 明るい屋外でも点灯していることが十分に認識できるレベル。 消費電流がシビアでなければ基本的にこれでOK。流れる電流は1~5mAで算出。 |
明るい | 十分な明るさが必要なとき。6mA~10mAで算出。 |
明るい(MAX) | 安全に使える範囲で、可能な限りの明るさが必要なとき。11~18mAで算出。 |
※使用するLEDはΦ3~Φ5のLEDや小型LEDやチップLEDなど、一般に広く使用されいる小型のLEDの仕様を元に算出しています。そのため照明用のパワーLEDなどはこの限りではありません。 ※すべての小型LEDがこの範囲で使用可能なことを保証するものではありません。「この範囲であればほぼ問題なく使える」程度の認識で活用をお願いします。
電流制限抵抗の計算方法
おおざっぱな用途別抵抗値は早見表の通りですが、どんなLEDにも使える設計方法も紹介します。ここで、Rは電流制限抵抗の抵抗値、Eは電源電圧、VFはLEDの順方向電圧、IFはLEDの順方向電流です。
電源電圧(E) | :LED と抵抗を含めた回路の電源電圧[V] |
順方向電圧(VF) | :LED 本体に印可したい電圧[V] |
順方向電流(IF) | :LED に流したい電流[A] |
電流制限抵抗(R) | :LED に流す電流を決定する抵抗値[Ω] |
ここでは例としてOptoSspply のOSDR3133A を明るく光らせたい場合を考えます。電源電圧は5V です。
電源電圧(E)
LED と抵抗を直列接続したときの両端に印可する電圧です。ただし、LED を駆動するスイッチング素子がある場合は、そのスイッチング素子の電圧降下を考慮する必要があります。(流す電流が数十mA 程度の場合はほぼ気にする必要はありません)
今回はスイッチング素子を考慮しないので、電源電圧Eは5Vとします。
※スイッチング素子がある場合の計算方法は、設計ユースケースで詳しく紹介しています。
順方向電圧(VF)
LEDにかけたい電圧を設定します。何V印可するべきかは、部品のデータシートを参照します。日本語では「電気的特性」、英語では「Electrical -Optical Characteristics」などと記載されています。 このLEDの場合はこのように記載されていました。
親切なデータシートにはシンボルが記載されています。OptSupplyは記載してくれていますね。DC Forward VoltageのTypを使用します。Min~Maxの範囲で使用すれば問題ないはずですが、電源電圧が変動したり、LEDの製造誤差を考慮するとTypの値を用いるのが無難です。
※この時、間違っても「絶対最大定格/ Absolute Maximum Rating」と記載されている表の値を使用してはいけません。この値は一瞬たりとも超えてはいけない値で、超えた場合は部品が壊れてしまいます。ギリギリの状態で使うこととなってしまうので、間違いなく電気的特性/ Electrical -Optical Characteristicsに記載されている値を参照しましょう。
順方向電流(IF)
この値は定格値として記載されている場合とされていない場合があります。このLEDは記載されていませんが、この場合はElectrical -Optical CharacteristicsのCondition(設定条件)の欄に記載されています。20mAを前提で記載されているので、この値を最大値(Max)として所望の明るさになる電流値を設定します。
小型LEDは20mA MAXで設定されているものが多いため、ざっくり以下の指標を参考にしてください。(マージンを加味し、20mAには設定しないようにしています)
所望の明るさ | 暗い | 普通 | 明るい | 明るい(MAX) |
電流値(IF) | 0.1~0.9mA | 1~5mA | 6~10mA | 11~18mA |
明るく点灯させたいので、8mAとします。ここまでのパラメータを代入すると
電流制限抵抗(R)
375Ωと計算できました。しかし、出てきた値の抵抗器が都合よく市販されていることは稀です。そのため、入手しやすいラインナップから選ぶしかありません。抵抗器のラインナップは多くのメーカー間で統一されています。ここでは、一般人でも入手しやすいE24系列から選ぶことにします。E24系列は以下の通りです。
1.0 | 1.1 | 1.2 | 1.3 | 1.5 | 1.6 | 1.8 | 2.0 | 2.2 | 2.4 | 2.7 | 3.0 |
3.3 | 3.6 | 3.9 | 4.3 | 4.7 | 5.1 | 5.6 | 6.2 | 6.8 | 7.5 | 8.2 | 9.1 |
これらの数字の1倍・10倍・100倍・1000倍・・・の値がラインナップされています。375Ωに近い値は360Ωと390Ωですが、こういった場合は電流が減る側(=抵抗が大きくなる側)を選択するのが安全です。よって390Ωとなります。
定格電力の確認
最後に、抵抗器の定格電力を超えた使い方になっていないか確認します。
定格電力とは、その抵抗器で消費可能な電力のことです。(単に「損失」と呼ぶこともあります)例として、電子工作でよく用いられる1/4Wカーボン抵抗で考えてみます。W=RI2なので、100Ωの抵抗器であれば50mAが流せる最大電流ということになります。
ただし、定格値MAXで使用するのは危険です。定数選定の一時的な試作であれば問題ないですが、回路を長期間使用する場合や製品設計の場合は許容電力に余裕を見る必要があります。どれだけ余裕を見て使うべきかの指標をディレーティングと呼びますが、一般に定格電力に対して50%未満とする場合が多いようです。(250mW定格であれば、半分の125mW未満で使用可能)
今回の順方向電流IFは8mAです。抵抗の消費電力はW=RI2に代入すると0.02496W≒25mWとなります。定格電力250mWに対して10%なので、50%に対して十分余裕がありクリアです。
以上で、OSDR3133Aを電源電圧 5V、順方向電流 8mAで使う場合は1/4W 390Ωのカーボン抵抗を使用すればよいことが分かりました。
お疲れさまでした!
設計ユースケース
スイッチング素子でON/OFFする場合
スイッチング素子がある場合は、ON時にその素子で発生する電圧降下を考慮しなければなりません。スイッチングにはトランジスタ・FET・リレーなどが考えられますが、ここではトランジスタとFETについて結果を比較してみます。
◆トランジスタの場合(左)
トランジスタではエミッタ-コレクタ間電飽和電圧相当の電圧降下が発生します。データシート上ではVCE(sat)というシンボルで表記されています。NPN型トランジスタの2SC1815の場合、0.25Vです。厳密には流れる電流でこの値は変化するのですが、電流制限抵抗値を決める際はこの電圧を電源電圧から差し引いて計算します。また、流す電流や電源電圧などの条件はこれまでと同等とします。
0.25Vを電源電圧から差し引くので、式はこのようになります。
約344Ωなので、E24系列から選ぶと360Ωとなりました。先ほどの390Ωからは少し低い値となりましたね。ついでにトランジスタでの損失を計算してみると、電流8mAで電圧が0.25Vなので2mWとなります。
◆FETの場合(右)
FETの場合は電圧降下ではなく、オン抵抗というパラメータで定義されています。シンボルはRDS(ON)です。DSはドレーン-ソース間を意味しています。オン抵抗もトランジスタ同様、データシートに記載があります。数パターンの記載がありますが、最も使用条件に近いものを選びましょう。今回はゲート駆動電圧までは考慮していないので、最悪条件として0.15Ωを用います。
オン抵抗分を計算結果から差し引きましたが、FETではほとんど変化がありませんでした。安全側(抵抗値の大きい値)を拾うので、390Ωとなります。FETの損失は電流8mA、抵抗が0.15Ωから0.18mWです。トランジスタの1/10以下の損失ということが分かります。今回の用途でにおいて、(損失の観点だけで評価すれば)トランジスタよりもFETが優れているということになります。