経緯

私は宮城県出身・神戸在住なのですが、2011年の東日本大震災(以下、3.11)を宮城で経験し、数年前に神戸へ引っ越してきました。あの3.11を経験した身としては、現居住地である関西圏でこれから発生すると言われている南海トラフ地震に備える意味でも、自家発電・蓄電するシステムは持っておきたいと思いました。

前々から「やってみよう、やってみよう」と思っていつつも、なかなか手が出なかった太陽光発電にようやく着手できました。

なぜ突然着手しようと思ったか?

「そろそろ地震くる気がする・・・」

というです。根拠は全くありません。

なんだか最近は細かい地震が多いな・・・と感じていたこともあり、突っ張り棒での家具の固定や保存食・水の確保をしていました。しかし、3.11の時を思い出してみると、水や食糧もそうですが停電による不便も大きかったように感じます。

水・食糧の確保、耐震ができたとすると、あとは電気があれば地震に限らず災害時もそれなりに不便なく暮らすことができます。

なぜ太陽光発電?

発電には様々な方法がありますが、家庭で実現できる方法は限られてきます。一番簡単な方法は、市販の家庭向け発電機を購入することです。

家庭向け発電機は数万~から販売されていますが、大型で定期的にメンテナンスが必要であり、何より燃料が必要です。燃料であるガソリンや灯油・軽油は災害時入手困難になりやすく、東日本大震災の時は一般家庭の乗用車からガソリンを抜き取るという盗難まで発生していました。専用タンクに備蓄しておく方法も考えられますが、地震で万が一漏れて引火したら大参事です。

水力・風力発電機を家庭向けに設置・自作している人もいますが、これらは場所を選びます。(近くに小川があれば、貯水しホースを引いて水力発電するのは夢です・・・)

太陽熱・バイオマスは現実的ではありません。

そうなると、機械的な動作部(モータの回転など)がなく、燃料不用でメンテナンスが比較的ラクな太陽光発電は家庭向け非常時用の発電方法としては理想的です。デメリットとして晴れなければ発電ができないという点がしばしば指摘されますが、バッテリに蓄電することで、発電できない時間帯も電力の供給をカバーできます。

システムの構成

基本構成

ただ太陽光発電・蓄電するシステムを作っても芸がなく、前例はいくらでもネット上で見つけることができます。

そこで、今回は発電電圧・バッテリ電圧をWEBで監視できる要素を追加します。いわゆるIoT化です。ソーラーパネルの出力とバッテリの端子からそれぞれ配線を引っ張り、アイソレータ回路でマイコンのADC(A/Dコンバータ)回路の受けることができる電圧範囲に変換します。今回はADCとしてArduino nanoを使用し、データの蓄積・グラフ表示・WEBサーバとしてRaspberry Pi zeroを使用します。ラズパイにはWEBサーバを積み、スマホやPCから発電量の変化やバッテリ残量を監視できるようにします。データベースにはmySQLWEBサーバにはnode-REDあたりを想定しています。

当然ですが、我が家はマンションの賃貸なのでオフグリッド(電力網から切り離された独立した系)発電になります。

12V→24Vへの拡張

また、当システムは予算の関係上まずは12Vで試験的に構築し、一通りの構成を実現できてから24Vに拡張します。拡張はソーラーパネル・バッテリをそれぞれ2直列化するだけ(チャージコントローラは元々12V/24V両対応)なので、実質カネさえ払えば実現は可能ではあるのですが、一度の出費が高額になること、感触をつかむという意味でもまずは12Vで構築します。

24V対応時の基本回路構成

ただし、電圧検出回路(アイソレーション回路・ADC)については24Vへの拡張時も変更なく対応できるように、はじめから24V対応で作ります。

残念ながらインバータは12V/24V両対応というものがなかなか見つからないので、24Vへの拡張時には新たに手配することにします。

設置環境

必要になる部材はごく一般的なものですが、設置環境がやや特殊です。ベランダに設置する予定ではあるのですが、

我が家はマンションの10階です。部材の落下には細心の注意を払わなくてはなりません。

パネルだけでも重量は15kgを優に超えます。そんなものが地上10階から落下してきたら、もはや凶器です。

また、部屋が角部屋(しかも海側)であることから、海風がダイレクトにヒットします。

100Wのソーラーパネルはざっくり100cm x 50cmと巨大な板状で、風に対しては大きな帆として作用します。台風が来ても落下しない強度が必要です。やりすぎでは?と思う補強をするくらいで丁度よいかもしれません。

ちなみに、真東を向けて垂直に設置予定です。というか部屋の構造上、それ以外に選択肢がありません。

また、ベランダから突きだして設置する方が効率は上がりますが、安全対策上リスクが高く、マンションの管理会社に文句を言われそうなので壁の内側にとどめておきます。

設置予定場所(自宅ベランダ)

この物干し竿を設置するポール(スリムポールというらしいです)が壁に固定されているため、パネルの設置に利用できそうですね。

物干し竿を支持する本来の機能を失わずに設置したいところです。

固定部材の設計

さて、電気回路の設計はおおよそ完了したので、ソーラーパネルの固定方法を真剣に考えます。先にも述べたように、ここはマンションの10階。部材・工具などの落下には細心の注意を払わなくてはなりません。また、定期的にボルトなどの緩みを点検できる構造にします。

近所のホームセンターを徘徊すること三時間。鋼材のLアングルにを用いることに決めました。(当初はアルミの角パイプを使う予定でしたが、アルミは軽量である代わりに強度面で不安が残ります)

各部材のモデリング

使用する部材を決めたら、一旦家に帰り3DCAD上でベランダに設置してみます。

まずはソーラーパネル・鋼材アングルなどの部品をモデリング。3DCADはautodeskのfusion360を使っています。

ソーラーパネルの3Dモデル(101 x 51cm)
ソーラーパネルの裏面。ねじ穴も再現する。
鋼材アングルの3Dモデル

ベランダ設置時のモデリング

最終的に出来上がったモデルがこちらです。パネル・アングル材すべて含めると、20kgを超えてしまいます。この重量を物干し竿用のポールにすべて任せるのは無謀なので、アングルを下まで伸ばして支えることにしました。

賃貸なので、ベランダ床のキズ対策で台座も追加しています。(黄色い丸で示している部分)

縦のアングルが上に突き出していますが、将来的に24V系に拡張することを想定してあえて未加工で使用します。(t=3の鋼材をカットするのが大変というのもあります・・・)

外から見た様子

荷重は全て床で支えられるので、前後方向の固定はポールに耐候インシュロックで固定すればよいでしょう。

ここまでで、必要な部材をリストアップしました。品名蘭がAmazonリンクになっています。固定用の部材はホームセンターで購入しており、一部部品(ラズパイ・Arduino)は手持ちから捻出しているため参考価格です。

No.品名仕様価格
1ソーラーパネル100W, 1010 x 510 x 30mm\9,480
2

チャージコントローラ

12/24V, USB付き\1,999
3鉛蓄電池12V, 20Ah\8,469
4

防水ケーブル

5m, 4sq\1,979
5

インバータ

12V, 1500W(MAX3000W)\10,998
6

Arduino nano

サードパーティ品\500(1コ)
7

Raspberrry Pi zero W

ピンヘッダ実装済み\3,280
8

鋼材アングル

2100 x 30 x 30mm, 長穴\1,400 x 4
9

鋼材アングル用台座

30 x 30mm用\400 x 2
10

ボルトナット

M9フランジボルト/ナット,10コ\320 x 2
11

耐候インシュロック

300mm\1,000
12

その他

落下防止用部材(チェーン・フック)\4,000

合計

\48,105

以上の部材を発注しました。ほとんどAmazonなので、到着は二日後くらいでしょうか。

続きます。