前々から興味はあったものの、なかなか行けていなかった「くりでんミュージアム」をようやく訪れることができました!

旧若柳駅舎

若柳駅舎は建設当初のままの姿です。真っ黒に変色した木材が、長い時間の経過を感じさせます。

出札口(切符を購入する窓口)の上には運賃表が張られていました。「細倉(マ)」と書かれているのは、旅客用は細倉マインパーク前駅と貨物駅である細倉駅と区別するためと思われます。

JR石越駅との接続表も設置されていました。おおよそ一時間に一本という頻度で運行されていました。石越駅は東北本線というだけあり、数が多いですね。

一般向けの鉄道荷物輸送の預かり窓口表示も残されていました。手荷物はかなり朝早くから受け付けていたようですね。

一番ホームにある謎のレバー

改札を出たホームにはレバーがありました。転てつ機(ポイントの操作レバー)かとも思いましたが、近くにポイントは見当たりません。まじまじと眺めていると、近くにいた係スタッフの方が腕木信号機の操作レバーであることをが教えてくれました。

なんとこのレバーは現役で、動態保存されている気動車を側線に入れる際、実際に切り替える様子を見ることができました。

ホーム上にあるレバーですが、操作対象の腕木信号機そのものは100m近く離れた場所にあります。電子技術も通信技術も発達していない時代、どのように遠隔で操作していたのか不思議でしたが、よくよく観察するとレバーからワイヤーが伸びていることが確認できました。レバーを操作することでワイヤーを引き、腕木信号機を操作しているようです。ワイヤーはホームの下を通り、石越方面の本線から2番・3番ホームに分岐するポイントに繋がっていました。

保存車両たち

栗原電鉄時代の電車

栗原電鉄と言えばこの電車、M15形です。静態保存されています。栗原電鉄時代の主力旅客列車でした。

赤とクリーム色のツートンカラーがかわいらしいですね。この尖がりが栗の頭を表現している・・・のかは分かりませんが、くりでんミュージアムのシンボル的存在です。

鉄道模型化されている車両でもあり、模型は売店で購入することができます。

車番はM153。M15形の3号機ということになります。M153のトレードマークは青屋根です。同型のM151,M152はグレー屋根だったの対し、M153だけは青く塗装されていました。

車体は金属製ですが、車内はレトロな木造ロングシートになっています。外装のツートンに合わせ、内装も高さで塗り分けられていました。

製造メーカはナニワ工機(現在のアルナ工機)です。昭和30年製造なので、2021年現在で車齢66年のおじいちゃんです(おばあちゃんかも?)

アルナ工機は阪急電車の100%子会社で、当時は路面電車を中心に手掛けていたことから小型電車の製造も得意分野でした。そんなアルナ工機が手掛けたこともあり、M15形は当時の地方私鉄向け電車にしては優れた車体設備を備えていました。

関西で生まれ、遠くはるばる東北の地へやってきた電車だったのですね。

朽ち果てたシルバーシートのステッカーが確認できました。こんな時代から優先座席があったことは驚きです。

くりはら田園鉄道時代の気動車

KD95形気動車(KD951,KD952, KD953)

非電化後に使われていた気動車「KD95形」は3両保存されていますが、そのうち2両(KD951,KD953)は動態保存です。廃線後にもかかわらず、自走できる状態で保存されている車両は極めて貴重な存在と言えるでしょう。

KD95のエンジンは日産ディーゼルでした。これは静態保存車のKD952でじっくり観察することができます。動態保存車では、ディーゼル特有のツーサイクルの駆動音と、カムシャフトへ繋がるベルトの回転が外から観察できました。

静態保存車のKD152のエンジン(KD151,KD153と同型)

正面の貫通扉には走る栗が。

車内はロングシートとボックスシートが混在した作りになっていました。床は板張り、窓の間には絵が飾られており、とても落ち着きのある空間です。パンフレットにも記載されていますが、内装に使われてる木材は宮城県産だそうです。

のんびりと田園の中を走るこんな列車に乗って、通学する人生も経験してみたかったなぁと妄想してしまいました。

製造メーカは富士重工でした。現在は株式会社SUBARU(スバル)と社名を変更しています。

KD10形気動車(KD11,KD12)

朝の通勤対策のため、1995年に名古屋鉄道から2両転入されました。レールバスと呼ばれるタイプの車両で、バスの設備をベースとしています。KD11とKD12の二両が保存され、KD11は運転会で乗ることができます。

静態保存されたKD12の右側のガラスが黒くふさがれていますが、現在は運転シミュレータが設置されており、電車でGOのような運転体験をすることができます。本物の運転台を使った運転シミュレーターは日本でここだけだそう。(そこまで難易度は高くないそうです)

KD12は旧若柳駅の機関車庫を改造した展示室に保管されていますので、雨でもじっくりと観察することができます。開放ピットにも入れるので車両を下から観察することができました。前後に一組ずつの車輪しかないことが確認できます。

事業用車両・貨車

旧若柳駅の構内には電車やディーゼルのほか、貨車や機関車などの事業用車両も多数保存されています。これらもかなり貴重な車両たちですので、くりでんミュージアムを訪れた際はこちらも要チェックです。

有蓋緩急車ワフ7形(ワフ74)

ワフ7形は貨車としての機能と緩急車(車掌車)としての機能を併せ持つ車両です。緩急車とはブレーキの機能を有する車両のことで、車掌さんが乗り込んで必要な時にブレーキを操作します。

同型のワフ71がくりでん旅客駅の終点(旧細倉マインパーク前駅)に保存されていますが、これらは木造有蓋緩急車で現存するほぼ唯一(唯二?)の車両であり、大変貴重なものです。

ちなみに、「ワ」は有蓋車(屋根付き貨車)、「フ」は緩急車であることを示しています。(ブレーキの「フ」と言われています)

無蓋貨車ト10(ト102,ト103)

ト10形は明治時代に作られた貨車で、栗原電鉄時代の昭和30年に西武鉄道から購入しました。ト102とト103の二両が保存されています。1987(昭和52)年の貨物輸送廃止後も、保線用途などで2005年まで在籍し続けていました。

「ト」は無蓋車(屋根のない貨車)を表しています。(トラックの「ト」)

車体はボロボロですが、車齢が100年を超えていることを考えると大切に使われていたことが伺えます。

有蓋貨車ワ10(ワ101,ワ102)

木造の2軸貨車です。真っ黒に塗装された貨車でしたが、すっかり剥がれて木目が露出してしまっています。

1922年(大正11年)製で、もともとは西武鉄道で使われていました。くりでんが線路の幅を762mmから1067mm(国鉄と共通)に改軌したタイミングで入線し、廃車後は倉庫として使われていました。

車体を観察すると、微かにくりでんのロゴが確認できます。

これは保存車両と言っていいか微妙ですが、貴重な資料であることには違いありません。

他にも小型のディーゼル機関車(DB10)保線用車(TMC100F)なども保存されていますが、今回は写真を撮り忘れてしまいました。これはまたの機会に。

動くぞ!乗れるぞ!KD95乗車会

くりでんミュージアムの目玉は、何といっても動く保存車両に乗れることです。

保存されている気動車KD95は生きてきます。動きます。乗れます。

旧若柳駅を起点に石越駅方面へ900mほど行くと片町裏信号所跡があります。毎日ではありませんが、この間の区間をKD95はお客さんを乗せて往復運転してくれます。詳しいスケジュールはくりでんミュージアムの公式ホームページを確認してください。

乗車券は旧若柳駅舎で購入できます。発行される切符はなんと硬券Suica世代の私としては興奮を抑えられません。しかも、発券時にはダッチングマシンで日にちを印字してくれます。

↓背面展望を撮影してみました。片町裏信号所で折り返し、旧若柳駅に戻る様子です。速度は20キロ程度でしょうか。そこまで速くはありませんが、こうして乗っていると既に廃線後の路線とはとても思えません。

運転台です。KD95は一両での運用も想定されているので、車体の両側に運転台があります。(両運転台と呼ばれるタイプの車両です)

進行方向が逆転する際は観察するチャンスです。

戦利品

今回の訪問では様々な戦利品をゲットできました。硬券やステッカーはよい記念品ですね。写真には入りませんでしたがこの他にKD95が刺繍されたトートバッグも購入しました。(サムネで使用)

JAF会員賞を見せるともらえるピンバッジやステッカーなど、グッズの種類はかなり豊富です。

左奥はトミーテックのNゲージモデルです。M153のトレードマークである青屋根もしっかり表現されているのが分かります。現物と見比べると少し鮮やかすぎるかな?と思ったので、もう少しフラットな青に塗りなおしてもよいかもしれません。

NゲージではM151+M153の二両セットでトミーテックが模型化していますが、M153の青屋根バージョンは一般に販売されておらず、くりでんミュージアムの売店での限定品です。

もしくは、栗原市にふるさと納税をして返礼品として受け取るという方法もあります。私はくりでんミュージアム・栗原市を応援したいという意味で、事前にふるさと納税させて頂きました。

そのためすでに青屋根のM153は持っていたのですが、何を思ったか売店で2両目を購入してしまいました。もともと室内灯やライトも転倒できるように改造しようと画策していたので、一両は改造用、もう一両は保存用にでもしようかと思います。

〆は地元のラーメンで

くりでんミュージアムに3時間ほど居座った後、くりでんミュージアムスタッフ一押しの「らーめん亘理」で腹を満たし帰路に着きました。個人的にはたいへん好みである太麺・辛味噌ラーメンです。立地も旧若柳駅から車で5分程度で、アクセスも良好!かなりオススメです。

ありがとうくりでん!ありがとう栗原!

辛みそラーメン。くりはら田園鉄道公園スタッフの皆さんもオススメする一品だそう。

まとめ

今回は数多くの貴重な鉄道資料に触れることができました。くりでんミュージアムは、他にはなかなかできない形で鉄道車両を保存(乗車会など)しています。それも、廃線後の今でもくりでんが多くの人々に愛されているからこそ実現したことなのだと感じました。

宮城県にも4月5日からはまん延防止等重点処置が発令され、厳しい経営を迫られているものと思います。しかし、これを何とか乗り越え、これからもくりでんを後世に伝え続けて頂きたいものです…と、口で言うだけなら簡単です。そこで、普段は遠方に住んでいる私でもできることがないかと調べたところ、くりでんミュージアムサポーターズ会員という形で支援できることが分かりました。

個人の場合は年間パスポート会員と個人サポート会員があり、私はなかなか訪れられないという理由から個人サポート会員として、微力ながら支援させて頂くこととしました。

一口4000円(令和4年度からは5000円)で個人サポーターになれるので、比較的気軽に応援することができるのではないでしょうか。

追記(2021-5-17)

参考サイト