この記事の目的

ななつ星乗客の平均年齢は62歳と高く、それゆえ詳細な旅の流れや経験談の記事は少ないです。

ましてや若い人の発信しているまとまった情報はほとんど存在しません。「当選した!!!」と喜んでいたのもつかの間、いざ本格的に準備を始めてみると分からないことだらけ。

幸運にも当選することができた若年層の方向けに、

  • どんな準備が必要だった?
  • 求められるお作法やレベル感は?
  • 軍資金はどのくらい必要?
  • 「旅行の前に知っておけばよかった!」こと
  • 詳細な体験談を知りたい

などといった、初当選した人なら誰もが抱くであろう疑問点を、我々の経験を踏まえて可能な限り共有したいと思います。

幸い、当選の通知が来てから実際の旅までは半年近い時間があります。この記事が、ななつ星に乗る方の旅が最高なものになるよう、準備の一助になれば幸いです。

なお、筆者は大の鉄道好き。やや鉄分多めになることはご了承ください。応募・手続きなどの事務的な流れについてはこちら↓の記事にまとめています。

コース・部屋

今回、我々が当選したコースは「3泊4日雲仙コース」。部屋は「DXスイートA」です。4日かけて九州の北半分を行ったり来たりします。

ななつ星HPより借用

要は「一番長いプランの一番高い部屋」ということになります。価格は2人で総額330万円。どうせ乗るなら最高の部屋で可能な限り長く滞在したい、という思いから2人で選びました。

全ての部屋が洗練されたデザインで、全く同じ部屋は一つもないななつ星の客室ですが、その中でもひときわ特徴的なのがDXスイートAです。編成の中で1部屋のみの大窓で、背面展望を2人占めできる客室に強烈な憧れを抱いていました。

久大本線

こんな山間部の橋梁や

熊本駅構内(停車時)

都市部の景色まですべて独り占め(ふたり占め)できます。

DXスイートAに限らず、ななつ星の車体に取り付けられた窓枠はすべて額縁をイメージして作られており、そこに映る車窓はすべて作品(絵画)に見立てられます。常に移りゆく車窓はいつまでも眺めていることができました。

なんと一両の半分が一つの客室で占有されています。そのため一両の幅をいっぱいまで使い、他の部屋にはない広々した空間を楽しめるのがDXスイートA客室の特徴です。
※DXスイートには「DXスイートB」という客室がもう一つ存在しますが、こちらに背面展望はありません。

どんな事前準備が必要?

応募から手続きの流れはこちらのページで紹介していますが、事務的な手続きを除けば、実はそこまで準備すべきことは多くありません。とはいえ、一番気になるところはやはり服装です。

ななつ星ではディナータイムやバー(KAZ BAR)利用の際はドレスコード(フォーマル)、ラウンジ金星の集合時はカジュアルフォーマルが求められます。我々もここが最も悩んだポイントでした。

公式パンフレット「ななつ星in九州のご案内」抜粋

カジュアルフォーマル

「ラウンジ金星」での服装はカジュアルフォーマルとされており、フォーマルと比べると比較的ラフなイメージです。男性ならノーネクタイのスーツ姿、女性は結婚式相当から1段階省略したような服装の方が多い印象でした。フォーマルと兼ねている方も見受けられました。こちらはあまり難しく考えなくてもよさそうです。

ラウンジ金星での格好(カジュアルフォーマル)

私はmontbellのワイシャツにノーブランドのスラックスと革靴(スーツ兼用のもの)、妻はPLEATS PLEASEのワンピースにお気に入りのジュエリーを纏って臨みました。

フォーマル

結論、男女ともに結婚式に参列できる程度の服装であれば全く問題ありません。つまり、男性であればスーツでOKです。女性の場合は正装として捉えられる範囲が広いため一概には言えませんが、やはり「結婚式相当」が分かりやすいと思います。燕尾服はやりすぎ(浮いてしまう)のようです。

ディナー用のフォーマルウェア

私はちょっと気合を入れて麻布テーラーで仕立てたブラックスーツと革靴を着用。総額約20万円程度です。
妻は金星で着ていたPLEATS PLEASEのワンピースの色違い(ピンク)を着用。ハンドバッグはアンテプリマのルッケットII(スモール)です。ディナーの際は斜め掛け用のワイヤーコードを取り外しました。

求められるお作法やレベル感は?

「難しいことを求められることはなかった」というのが正直感想です。

茶司の德淵さんにお茶を入れて頂けるのですが、「作法は気にせず召し上がってください」と言って頂けました。

茶室にてもてなしを受けたときの様子
(※徳淵さんに許可を得て掲載)

とはいえ、ななつ星は正装を求められる大人の社交場。最低限のテーブルマナーや礼儀は必要です。

  1. 並べられたカトラリーは外側から使う
  2. 食事中にナイフ・フォークを置くときはハの字に置く(食べてる最中のサイン)
  3. 食べ終わった皿の右下にカトラリーを平行に置く(食べ終わったサイン)
  4. 中座・退席する際にナプキンはきれいに畳まず無造作にイスの上に置く(きれいに畳むのはおいしくなかったサイン)

二日間のディナーを終えたうえで、これくらいのマナーができれば問題ないと思いました。
ディナー会場のラウンジカー(1号車)はとても煌びやかで宮殿のような作りですが、雰囲気は和やかで硬い空気は一切ありませんでした。(乗客がリラックスできる雰囲気をクルーの皆さんが作って下さっています)

他の乗客やクルーの方に不快感を与えない程度の一般常識があれば問題ありません。

軍資金はどのくらい必要?

特別な旅行は記念品やお土産を買っていきたいところ。ななつ星にもたくさんのグッズが販売されています。それらは実際に車内で使われている備品・食器類・装飾品・クルーの道具など、さまざまなジャンルが存在します。

食事やバータイムで使われているティーカップやグラスはどれも美しく、旅行前にホームページで見ていた時には全く興味を持っていなかったものでも、いざ手に取って使ってしまうと気に入ってしまうものも少なくありませんでした。例えば・・・

筆者が一目惚れした「雪花グラス」

「雪花グラス」です。よく見ると内部に細かな無数のクラック(ひび)が入っており、これが使用する度に増えていき、自分だけのグラスに育っていきます。その特性上、全く同じ模様のグラスは世界に一つもないという点もステキです。

結局のところ、旅の中で「何が自分に刺さったか」次第です。我々の場合、お土産やグッズ代は総額約15万円でした。ただし、これらは必ずしも旅行中までに用意する必要はありません。客室に注文用紙が置いてあり、車内で決済を済ませることも可能ですが、ほとんどのグッズは上記のJR九州お買い物マーケットで購入が可能です。

無理に押し売りさせることはありませんし、なんなら勧められることも全くありませんでした。心から「欲しい」と思ったものだけ購入しましょう。

「旅行の前に知っておけばよかった!」こと

今回の旅は我々にとって十分良いものになりましたが、次回行くときはこれだけは忘れないでおこう・・・と思ったことがいくつもありました。どれも、これから乗る方には是非知っておいてほしいことです。

前泊の宿はケチらない

3泊4日の旅は体力を使います。特に列車泊は揺れるわうるさいわで、慣れていないと全く寝れないなんてことも。3泊4日の真ん中の一泊は温泉宿に宿泊なので安眠できますが、それでも体調を崩す方もいらっしゃるようです。このような連泊の旅行では体調マネジメントが最大限に楽しむコツと言うことを身をもって理解できます。

我々は「次の日から思う存分贅沢するのだから、前泊は安く抑えよう」と考え安い宿を選びました。しかし結果、慣れない狭いベッドで疲れは完全にはとれず、睡眠時間も短くなってしまい、寝不足気味での乗車となってしまいました。

季節にもよりますが、加湿機能付きの空気清浄機が設置された部屋であるとなお良いですね。

体調は万全で臨む

上記の「前泊の宿はケチらない」にも繋がりますが、体調は第一優先で整えてから行きましょう。旅の間は美しい社内や景色と非日常感で、ドーパミン・アドレナリンがドバドバ状態。
美味しいお酒やお料理、バータイムのおつまみなどオールインクルーシブで楽しめる状態が続くので、身体に負担がかかり続けることになります。

旅の途中で体力ゲージがゼロにならないようにするためには旅の途中のケアも大事ですが、旅の始まりの時点でなるべく体力ゲージMAX・状態異常なしにしておきましょう。

カメラマンにはガンガン撮ってもらう

四日間、ななつ星専属のカメラマンの方が同伴してくれます。カメラマンは食事中やエスカレーション中、駅に停車して乗客が自由に駅構内を散策している間など、思い出に残るショットを狙っています。

なにも言わなくてもそれなりに絵になる写真を撮ってくれるのですが、「ここ撮ってほしい!」と思ったら迷わず呼び出しましょう。

一見、カメラマンの仕事を増やすようで気が引ける・・・と思うかもしれませんが、実はこれWin-Winなんです。カメラマンはななつ星の運営側が手配してくれますが、最終的に撮影された写真は旅行が終わった後にそれぞれの乗客がWEBサイト上でほしいものを選んで購入する形になります。(データ版:800円/枚、印刷版:900円/枚)

そのため、乗客が撮ってほしい写真(=すなわち売れる可能性の高い写真)を撮れることは、カメラマンにとっても嬉しいことなんです。

ななつ星の車内はどこでも絵になります。すべてが作品であり、舞台です。最高の思い出をプロの腕で残してもらいましょう。

ちなみに我々は上記を意識せず旅を終えましたが、16枚ほど購入しました。自分のスマホでも何千枚という写真を撮りましたが、「このシーン、プロに撮ってもらいたかったな」と思うシーンはいくつもあります。

なんでもクルーに相談しよう

ななつ星のクルーは、一流のホテルマン並みのホスピタリティとスキルをお持ちです。少しでも困ったことや不安があれば、迷わず相談しましょう。びっくりするくらいなんでも対応してくれます。

例えば、私の妻はパニック発作に近い症状を持っています。他人の視線が気になったり、他人に迷惑をかけることを異常に意識してしまうことで強いストレスを感じてしまう症状です。
これを担当クルーの方に相談したところ、食事の際の席配置はなるべく端の席にしてもらえ、トイレの空き状況なども細かく伝えてくれました。お陰様で妻ものびのびと食事を楽しむことができ、よい旅となりました。

クルーの方をこき使ってよいという意味では決してありませんが、我々乗客のお世話をすることがクルーの仕事です。

体験談

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